Scedosporium apiospermum感染症にについて調べる機会があったのでまとめなおしました。
Scedosporium属
ヒトに感染する主なスケドスポリウム属はS. apiospermumとS. prolificansです1)。Scedosporium apiospermumは無性生殖世代と有性生殖世代で名前が異なり、Pseudallescheria boydiiとも呼ばれることがあるようです(知らんがな!!)。土壌、下水、汚染された水中に一般的にいる糸状菌です。免疫不全の患者での皮膚感染症を起こし得ます2)が、免疫正常でも、津波・溺水などをきっかけに津波肺を起こすことも報告されています3)。
正直あまり遭遇頻度が高くないように思っていましたが、どうやらアスペルギルスに次ぐ頻度のようです。スペイン、オーストラリアにおいては糸状菌の中ではアスペルギルスに次いで2番手とされています4,5)。オーストラリアの報告ではアスペルギルス以外だとムコールが45.7%, スケドスポリウムが33.3%, フサリウムが8%と報告されています。(ムコールは接合菌の分類なので、糸状菌の中では2番手というのは正しいです。)
日本でどうなのかはわからなかったです。スケドスポリウムによる感染症のreviewはありますが、上記のような疫学研究は見つけられませんでした。真菌に関してはヒストプラズマやコクシジオイデスのように地域性を示すもの6)はありますし、一概に同じとはいいがたいとは思いますが、スペインやオーストラリア同様に頻度としては比較的高いのかもしれません。(アスペルギルスを除けば、という意味ですが。)
Scedosporiumの形態
真菌は細菌と違って形態が様々違いますので見ていて楽しいです。今回のようなスケドスポリウムは細長い隔壁のある菌糸(隔壁なければ接合菌です)の先っちょに、レモンのような分生子が1-2個ついています。ぜひ画像検索してみてください。なんだかちょっと可愛いです。この菌糸と分生子の形が様々違くて、属・種によっても形が変わるんですよね。
そして例えばアスペルギルス8)。
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9808/9808_yomoyama.pdf
(画像をそのまま張り付けるのは著作権的にどうなのかなと思い、リンクを貼り付けます。)
pdf中に写真付きで載っています。頭がボンバーしてたり、刈り上げてたり、タンポポだったり、真っ黒だったり、みんな違ってみんないい。
治療について
これはボリコナゾールが1st choiceです。希少深在性真菌症のガイドライン9)でもボリコナゾールが押されています。点滴でも内服でも可能で長期使用ができることが利点です。ただしTDMを行わないといけない点、肝障害、注射製剤に限っては腎障害に注意が必要です。2nd choiceはイトラコナゾールやポサコナゾールなどが推奨されています。ミカファンギンも日本のガイドラインでは初期治療ないしボリコナゾールと併用と書いてあります、、、が、UpToDateにはその記載はありません。ミカファンギンなどのエキノキャンディンは軒並みMICが高いとされているので、併用はしても、代替薬にはなりえないような気がしますが・・・。
意外なことにアムホテリシンBが使えないんですね。真菌感染症の王様と考えていたのですが、スケドスポリウムには聞かないようです。動物実験、後ろ向き研究ともに反応性が不良と報告されています10,11)。UpToDateにも書いてありますし、岩田健太郎先生の抗菌薬の考え方,使い方12)にも記載されていました。
本コラムのまとめ
まとめさせていただくと、
- スケドスポリウムは稀な真菌ではない。アスペルギルスに次いで2番目に多い糸状菌かもしれない
- レモンのような分生子が特徴的。遭遇したら見に行こう!
- 治療はボリコナゾール。アムホテリシンBが使えず、たぶんミカファンギンも効果は不十分。
という形かと思います。
明日からの診療に役立てられれば幸いです。
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引用文献:
1)Cortez KJ, Roilides E, Quiroz-Telles F, et al. Infections caused by Scedosporium spp. Clin Microbiol Rev. 2008;21(1):157-197. doi:10.1128/CMR.00039-07
2)山口大学医学部付属病院検査部HP スケドスポリウム症
https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~jnaka/kensabu/research/bact_kako_6.html
3)畠山裕司ら. Scedosporium属が分離された津波肺の3症例 日本臨床微生物学雑誌 Vol. 22 No. 4 2012. 35
4)Antimicrob Agents Chemother. 2013;57(7):3380-3387. doi:10.1128/AAC.00383-13
5)Clin Microbiol Infect. 2015;21(5):490.e1-490.e4910. doi:10.1016/j.cmi.2014.12.021
6)千葉大学真菌医学研究センター 目で見る真菌症シリーズ 6
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/medemiru/me06.html
7)
University of ADELAIDE Mycology Schedosporium
https://www.adelaide.edu.au/mycology/fungal-descriptions-and-antifungal-susceptibility/hyphomycetes-conidial-moulds/scedosporium#scedosporium-apiospermum-
8)萩原 大祐 アスペルギルス属糸状菌:国民的fungal group 生物工学 第98巻 第8号(2020)
9)希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン
10)Clin Infect Dis. 2005;40 Suppl 6:S401-S408.
11)J Antimicrob Chemother. 2004;54(6):1092-1095.
12)岩田健太郎 抗菌薬の考え方,使い方 ver.5 コロナの時代の差異
https://amzn.to/4dEsFE1


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