周期性発熱症候群の鑑別の仕方

総合診療
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総合内科の外来をしていると、結構よく紹介される周期性発熱。家族性地中海熱などを心配され来院される患者も紹介元も多いです。いろんな鑑別を立てて網羅的に検査するも、これだ!という確定的な検査結果が得られない場合も多く、いつももどかしさを感じながら診察しています。

どんな鑑別、検査をすればいいのか?をまとめましたので、明日からの診療に役立てられれば幸いです。
(本当は感染症や悪性腫瘍、代謝性疾患についても詳しく触れたかったのですが、長くなりすぎるので駆け足になってます。)

この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
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周期性発熱症候群の鑑別リスト

いきなり本題ですが、鑑別診断で困るのは実際にはこのあたりだと思われます。

  • 遺伝性自己炎症性疾患
    つまり、家族性地中海熱(FMF)、PFAPA症候群、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD症候群(HIDS)・メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、クリオパイリン関連周期熱症候群(CAPS)
  • 全身性若年性特発性関節炎(JIA),成人Still病(AOSD)
  • 血管炎(特に中・大血管炎、IgA血管炎)
  • SLE, RA, 不全型ベーチェット
  • 感染症(特に培養陰性感染性心内膜炎, Borrelia, 肺外結核)
  • 悪性腫瘍(特に血管内リンパ腫*)
  • 代謝性疾患(急性間欠性ポルフィリン症)

ですが、、、結構難しいです。それぞれ解説していきます。

遺伝性自己炎症性疾患

家族性地中海熱(FMF)、PFAPA症候群、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高IgD症候群(HIDS)・メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)が候補に挙がっています。「いきなりなんだそれは…」というのが普通の感想だと思いますし、筆者もそうです。かろうじてFMF2例、PFAPA1例、TRAPS疑い1例を経験しましたが、HIDS/MKDやCAPSは存在も知りませんでした。

これらはすべて、遺伝子異常が原因で何らかのトリガー(運動、ストレス、感染、手術、月経・妊娠など)を契機に短期的に発熱を繰り返す病態です。家族性地中海熱FMFが最も頻度としては多く、名前のごとく地域性があります。なんとびっくりイラクでは1/4人に遺伝子異常を持ってるらしいです。95%は無症状みたいですが。日本でももちろん症例はありますが患者数は300-500人程度のようです1-2)。ただし診断までが非常に長いとされているため、実際の患者数はもっと多いのかもしれません。ちなみにFMF専用のホームページがあり、病態などはよくまとまっているので、疑い症例がいた際には一度見ておくといいかもしれません3)。

それぞれ遺伝子異常が異なります。FMFではMEFV遺伝子異常(保険診療可能です4))、HIDS/MKDはMVK遺伝子異常、TNF受容体遺伝子、CAPSはNLRP3遺伝子のようです。PFAPA症候群はよく話題に上がりますが、責任遺伝子異常は同定されていません。また、それぞれの疾患ごとに好発年齢や発熱期間も異なるようです。

ただし、これをでは実際に色々暗記する必要があるでしょうか。頻度が非常に低い上に、長期に繰り返せばアミロイドーシスを起こすとはいえ短期的な予後は良好なので、「遺伝性自己炎症性疾患の可能性が高くなってから、それぞれの鑑別を始めればいい」と考えています。その際には暗記で検査オーダーをするのではなく、UpToDate等を見ながらゆっくり鑑別すればいいのではないでしょうか。

全身性若年性特発性関節炎(JIA),成人Still病(AOSD)

筆者は成人を相手にすることが多いので、JIAの診断はしたことがないですが、AOSDと同じ疾患群なので一緒にしました。こういった自己免疫疾患が周期性発熱の原因になるのか?と疑問に思うかもしれませんが、AOSDに関しては周期的になりえます。一回だけの単周期型、繰り返す多周期全身型、だらだら続く慢性関節炎型(これseronegative RAじゃないのかなぁ)に分けられます4)。この多周期全身型が、周期性発熱の鑑別対象です。

発熱に加えて関節痛や咽頭痛、リンパ節腫脹などが自覚症状として出ます。これPFAPA症候群とどう鑑別するんだ?となると思いますが、AOSDの方が早く解熱する上、皮疹が出ればそれらしいです。

中・大血管炎、SLE, RA(seronegative RA含む), 不全型ベーチェット

ここが難しいところかもしれません。中・大血管炎には特異的バイオマーカーが存在しないためです。ANCA関連血管炎であれば神経症状や腎炎所見から疑いやすく、ANCAを測定すれば一発診断が可能と思われますので迷うことはないです。が、高安動脈炎や結節性動脈炎にはこれといった採血がありません。造影CT検査はまだしも血管造影はハードルが高いですので、診断のしにくい分野と筆者は考えています。

SLEとRAはANCA関連血管炎と同様、関節炎症状や皮疹など特徴的な症状がある上にRFや抗核抗体、CCP抗体を取れば診断が容易です。問題はseronegative RAと不全型ベーチェットでしょう。いずれもバイオマーカーがないことに起因します。

感染症、悪性腫瘍、代謝性疾患

感染症の部分でいえば、特に培養陰性感染性心内膜炎*, Borrelia, パルボウィルスB19, 肺外結核*のあたりが思い浮かびます。培養陰性感染性心内膜炎はBartonella, Brucella, Coxiellaなどですが、どれも動物媒介ですので、問診であたりを付けられます。ただし、培養陰性感染性心内膜炎と断定するには、事前抗菌薬が絶対にないことを何度も確認が必要です。Borreliaもマダニ媒介ですので病歴で推定可能です。感染症の不明熱といれば結核…なんていう言葉をよくいいますが、肺結核は胸部CT検査で簡単に疑えますので、考えるべきはリンパ節結核などの肺外結核です。

悪性腫瘍も同様です。何の悪性腫瘍なのか、を考えない限りにはやみくもになってしまいます。たいていの固形癌は発熱する程のステージであれば造影CTで診断可能ですので、骨転移をきたしやすく原発巣のサイズに著変のない癌種(乳癌・前立腺癌)と血管内で増殖する血管内リンパ腫でしょう。ただしそれも何らかの採血異常(CaやLDHなど)が反映されてきそうな印象です。

まとめ

周期性発熱症候群は総合内科外来では遭遇する頻度の高い疾患で、鑑別は多岐にわたりますが、まとめると意外とやることはシンプルかもしれません。

  • 予後良好な遺伝性自己免疫症候群(FMFやPFAPA)は最後に考える。
    診断の遅れが予後に直結しない。逆に、発熱を繰り返せば繰り返すほど考えやすくなる。
  • ルーチンの不明熱検査(採血、自己抗体、血液培養、造影CT検査)でたいていの病態が診断できる
  • 特異的バイオマーカーのない病態(JIA/AOSD,結節性動脈炎、不全型ベーチェット)
    疑わないと聞かない/調べない病態(IgA血管炎, 培養陰性IE, Borreria, 肺外結核, 血管内リンパ腫)
    に注意

この3点かと思います。

引用文献が今回はあまり乏しいですが、明日からの診療に役立てていただければ幸いです。

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引用文献

1)難病情報センター 家族性地中海熱

2) Medical Note 家族性地中海熱 https://medicalnote.jp/features/familial_mediterranean_fever/

3)SRL MEFV遺伝子解析 https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/0X7990100

4)三村俊英 成人Still病の診断と治療 日本内科学会雑誌 107 巻 9 号 1895

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