稀ではありますが、偶発的に無症状の仙骨前面の腫瘤を見つけた場合のマネジメント方法です。手術するのかしないのか?どの診療科で見ればいいのか?どういった検査をしたらいいのか?調べてみました
Development cyst
始まりは1953年です。先天的に仙骨前面に嚢胞を形成する病態(Development cyst)として報告されました1) 。先天的嚢胞であり緩徐に増大しますので、Teratoma(奇形腫)も交えて、congenital cystic tumorともいわれているようです2)。Development cystの中にはdermoid cyst, epidermoid cyst, mucus secreting cyst(tailgut cyst)の3つが代表的と言われております。de”s”moid tumorも文献で触れられていたり、desmoid cystなど混同されている文献2)もあります。非常に似たような名前で紛らわしいです。混乱します。
過去の報告2)から抜粋するに、
- 仙骨前面に生じる
- 3人/20000人の頻度で女性に多い
- 多くは先天腫瘍
- 胎生期のWolff管の遺残組織に上皮成分が迷入して起こる
とされています。多くはdermoid cystとepidermoid cystで、87.5%を占めています。
development cystはそれぞれ由来と内容物が違います。いずれも外肺葉の一部の残存ですが、dermoid cystは皮膚の一部組織(皮脂腺や汗腺,毛髪など)を含み、epidermoid cystは含まず、mucus secreting cyst(tailgut cyst)は円柱上皮由来で粘液を産生するします。tailgut cystだけ円柱上皮由来なのは、胎児期の尾腸(前腸・中腸・後腸の、後腸の先っちょでしょうか??※私見)が由来だからです。
Development cystの症状・診断および治療
場所が場所なだけに、便秘,肛門痛,下腹部痛,会陰部違和感などが出現することもあります3)が、無症状で偶然発覚することもあります。確定診断には結局手術組織の病理検査が必要ですが、超音波検査やCT検査(造影・非造影含む)、MRI検査(造影・非造影含む)が有用です3)。筆者が考えるにもっとも有用なのは、造影MRIでしょうか。単純でもいいように思われます。内容物の均一性の有無、皮膚付属器の有無などが判別できます。ただし確定診断のためには結局、手術ないし(後述するリスクのある)穿刺吸引が必要になるのですが…。
直腸診は後述するDesmoid tumorと鑑別するのであれば感触で鑑別できるのかもしれませんが、わざわざDevelopment cyst内だけの鑑別目的に行う必要性は少ないでしょう。腺癌を合併した報告では可動性が乏しいと報告があります4)ので、良悪性の鑑別には有用かもしれません。
腫瘍マーカーについては文献が乏しく詳細は不明ですが、過去の症例報告3例2)ではいずれも腫瘍マーカーの上昇はありませんでしたが、n数が少ないです。ただしTailgut cystに腺癌が合併した症例4)ではCEAが高値であったとのことですので、どこまでエビデンスがあるかは不明ですが、腫瘍マーカー(CEA,SCC)は悪性疾患との鑑別の補助にはなりえるのかもしれません(私見)。
FDG-PETを用いた報告4)もあります。この症例では腫瘍サイズが大きく、内部の充実成分も大きく悪性腫瘍を考慮します。ただし日本国内のFDG-PETの保険適応外5)になる可能性がありそうです。組織診断をどこかで試みて、それで診断できない場合に施行が流れとなるのではないでしょうか。
治療は、基本的には外科手術による完全切除とされているようです。悪性例が3.9%あり、そのうちの2/3の症例は術後局所再発し術後14か月以内で死亡していることが所以のようです2)。細胞診は腫瘍の播種、感染、瘻孔形成などの可能性のために、完全切除可能が優先されるとも報告されています6)。ただ、ひとえに手術といえど、有症状ならまだしも無症状の場合にはどうしたらいいのかは不明です。定期的に画像フォローしつつ症状出現時に手術、なども案には上がるのかもしれませんが、そういった報告があるのかは調べ切れていません。このアプローチには悪性腫瘍だった場合のリスクがあります。
Desmoid tumor
これがはまりました。De”s”moid tumorとDermoid cystが混同されている文献がありますので注意が必要です。両者は全く性格が異なります。desmoid cystは皮膚軟部腫瘍の一つで、緩徐に増大していく線維種のようなものです。ギリシャ語のデスモス(意味は結び付く、固定など)に由来するそうで、硬いのが特徴のようです。腫瘍なので局所的に増大していきますが、転移はしないので、悪性と良性の中間という話もありますが、個人的には悪性腫瘍として考えたほうがよさそうに思っています7)
MRIが有用そうでして、やはり元々が線維ですから、T1で筋肉と同等程度になり、T2ではコラーゲン繊維の量に準じて高信号だったりするようです8)。(←の引用文献の画像がめちゃくちゃ特徴的で衝撃的ですので、一読の価値ありです。これは良性とはいいがたいですね…)
Development cystのマネジメント
総括すると、
- 有症状or無症状で偶発的に見つかる稀な疾患
- 診断にはMRIが有用。充実成分の評価のために造影も考慮だが、結局は病理診断が必須。
悪性かの判断に直腸診や腫瘍マーカー、FDG-PETは考慮されるが、種々の問題あり - Desmoid tumor, 癌合併に注意
- 治療は基本的には手術。穿刺吸引よりも優先される
のような感じでしょうか。
明日からの診療に役立てられれば幸いです。
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引用文献:
- Am J Surg. 1953;86(6):678-683.
- 日本大腸肛門病会誌(年間 1―10 号)第 60 巻第 3 号 2007 年 3 月・柴田佳久
- 日本大腸肛門病会誌(年間 1-10 号)第 65 巻第 2 号 2012 年 2 月・茂田浩平ほか
- 日臨外会誌 70(3),906―911,2009
- FDG PET,PET/CT 診療ガイドライン2020
- 日本外科系連合学会誌 第 45 巻 6 号
- デスモイド腫瘍とは がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/cancer/desmoid_tumor/index.html
- AJR Am J Roentgenol. 2005 Apr;184(4):1128-35.


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