救急で血液ガスを検査することはよくよくあると思われますが、その際に、「動脈で取るか?静脈で取るか?」論議が発生すると思います(以下Aガス、Vガスにします)。もちろん正確性を取るのであればAガスと思われますが、橈骨なり鼠経なりAガス採血にはリスクがつきものです。鼠経採血の後に動脈解離や瘤を起こしたケースは耳にします(人工血管患者では禁忌ですし、そうでなくてもDAPT内服中や重症ASOでは躊躇されます)。t-PAを投与すると穿刺部位から出血する可能性もありますし、避けられるなら避けたい手技と思っています。
そこで有用なのが静脈血を用いた血液ガス(Vガス)です。これならルートと一緒に採血できますし、上述のようなリスクはありません。どこまでVガスで代用できるのか?については様々な論議があり一見してできることではない思いますが、個人的には、
「PaO2以外は代用あるいは除外診断に使える」
「PaO2はSatからある程度推測できるのでVガスだけでもなんとかなる」
と思っていますので、参考にしてみてください。
最初に結論
- pH:Vgasの方がABGより0.03ぐらい低い
※ほとんど同じ - O2:当てにならない
- CO2:Vgasの方が4.1mmHgほど高い
※かえって低くなりうるとも報告もあり注意 - CHCO3-:Vgasの方が1.08meq/Lほど低い
※ほとんど同じ。 - Lac;Vagsの方が0.25 mmol/lほど高い
※ほとんど同じ。ただし高い程ブレが大きい
が調べた限りではあげられました1-2)。議論の分かれる二酸化炭素と乳酸値について追記させていただこうと思っています。
二酸化炭素(CO2)は静脈血ガスで高くなりやすい
複数の論文でRCTが出ており一貫したことは言えないのですが、CO2はおおむね静脈血ガスの方が動脈血ガスよりも高くなる傾向にはありそうです。のちにLacの項目でも引用する2014年のRCT3)ですが、4.15torr (95% CI -5.54 to -2.77)となっています。ただ、論文中でも指摘されていますが、各論文のばらつきが大きいです。
一方でCO2が逆に低下することがある(!)という論文もあります。2019年の後ろ向き研究4)では、おおむね+10—15mmHgと大きく変動していました。PvCO2の方が低くなることがあるということは驚愕です(理論上は静脈血の方が二酸化炭素濃度は高くなるはずです)。この点は論文中でも触れられていて、この研究は挿管患者の後ろ向き研究かつ動脈血血ガスと静脈血液ガスの採取タイミングが違うことに注意が必要とされています。Lacのような代謝産物・循環不全の結果産物では数分程度の換気では変化はないかもしれませんが、CO2値は挿管や人工呼吸などをする/しないで大幅に変動すると思われます。いったいどれぐらいの時間で血中のCO2に影響が出るのか管理人は知らないですが、それが結果に表れているような気がしてなりません。基本的には管理人は静脈血ガスではCO2は高くなる、と思っています。
こういった論文を受け、静脈血ガスでのCO2値の解釈については人工呼吸管理で有名な竜馬先生も指摘しています5)。人工呼吸器管理をする/しないという大きな方針を下すような際には、動脈血液ガスでの評価の方がいいのかもしれません。ただし、やはりこれも採血タイミングによるバイアスがあるかもしれないと考えていいと思います。
ただ、逆に言えば、それを意識したうえであれば十分評価に値するようにも思われます。呼吸苦を訴える高齢者が来た時に、わざわざ後負荷をかけるような動脈血採血を初手からする必要はありません。PvCO2でスクリーニングして、それが境界値だったときに再考すればOKです。まずは非侵襲的に採取して、必要であれば最小限の苦痛で採取しなおす、でいいように思います。
乳酸(Lac)は実はほとんど同じ
先ほど参照した論文3)では乳酸値(Lac)についても考察されています。0.25 mmol/l (95% CI 0.15-0.35)の差があると結論けています。この0.15-0.35mmol/Lという狭さは驚異的なように思われます。体感的には1-2mmol/Lぐらい違うように思っていたのですが、凄いですね。
しかしながらこちらも注意が必要で、乳酸値が高値となればなるほどブレが大きくなり、逆にvLacの方が低くなるということがあるようです5)。本文中でも指摘されている通り、採取タイミングに相違がある点が影響している可能性が指摘されていますが、たとえそれを加味しても、乳酸値が高ければ高いほど検査値の”ブレ”は大きくなっていると予想されます。逆に、低値であれば静脈血でも動脈血でもほとんど変わらないようです。
つまり、あまりにもVガスで高値の場合には、その値をベースラインとして治療効果の判定に使うことはできないと考えます。とくにその後に乳酸値のフォローを考えている際には、Aガスを取り直しておいた方がいいかもしれません。例えば敗血症性ショックの方がいたとして、ベースラインの静脈血液ガスで乳酸値が8mmol/Lで、3時間後フォローで4mmol/Lになっていたとしても、それが良くなっているのか横ばいなのか評価は不可能です。もしかしたらベースラインの乳酸値はもっと高かったかもしれないですし、フォローの乳酸値はもっと低いかもしれないです。
まとめ
動脈血ガスと静脈血ガスにはPaO2以外には大した差はないかもしれません。スクリーニング・除外診断目的としては十分に有用です。アシドーシスのスクリーニングをしたい、CO2貯留がないか取り急ぎ見ておきたい、苦痛のない非侵襲的な範疇でまずは採血したい、Lacが上昇していないかだけ見ておきたい、といった時に一般採血と一緒に提出するには十分に有用ではないかと管理人は考えます。

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<以下引用文献>
4)田中竜馬:医学界新聞プラス[第2回]ERでの血液ガスの活用『救急外来,ここだけの話』より
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperplus/archive/y2021/kokodake_02


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