虫垂炎でルーチンな超音波検査は必要か?

総合診療
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筆者の施設では虫垂炎を疑う患者や、確定後の患者に超音波検査を行うことが多いです。理由は壊疽性の評価や膿瘍、微小穿孔の有無、腫瘍性のr/oの為など様々です。ただし、実際に造影CTでわからず、超音波でそれらが疑われた症例はそう多くはありません。「虫垂炎が確定した患者でルーチンで超音波検査を行う意義があるのか」を改めて調べなおしました。

この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
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虫垂炎に対する超音波検査の感度

 そもそも超音波による虫垂の描出は難しく、検査者によって大きく左右されます。健常者をターゲットとした報告では、49.2%での検出率と報告されていました1。実際には虫垂炎患者であれば虫垂は腫大し、より描出しやすくなります。ただそれでも感度は72.5%(95% [CI] = 58.8%-86.3%)と報告2されており、抽出感度としてはCT検査に劣ります。被験者の体格や技師の技術によって感度は大きく左右されるため一貫しておりません。検査による疼痛や不快感の問題もあります。したがって米国救急医学会のガイドライン3でも超音波検査よりもCT検査の方が推奨されており、特別な状況(小児、若年者、妊婦)でない限りは虫垂炎を否定するためならCT検査の方が望ましいと考えます。

虫垂腫瘍、虫垂嚢腫、腺腫・腺癌

 ところで虫垂炎を起こした背景に粘液嚢腫のような虫垂腫瘍が隠れていることがあります。手術例全例で見れば0.2-0.7%であり比較的稀です4。虫垂嚢腫には過形成、粘液嚢胞腺腫、粘液嚢胞腺癌が含まれますが、そのうち過形成は胃の過形成性ポリープと同じような粘膜で、外科的治療のみで予後は良好と報告されています5。ただしそれらはすべて他の手術に伴い一緒に摘出された虫垂で”たまたま”見つけた(ほとんどが病理組織的に診断され、肉眼的異常があったとしてもわずかに内腔が拡張し、粘液がたまっているのみ)のようですので、いわゆる”虫垂腫瘍”とは分類が違うのかもしれません。同じ病態なのかはわからないのですが、リンパ組織過形成などといった病態も報告されています6,7。よく回盲部炎を含めた近隣の炎症波及で虫垂が腫大して見える人がいると思いますが、こういった病態なのでしょうか。こちらに関してはまた調べていきたいところです。

 また、粘液嚢胞腺癌は言わずもがなですが、粘液嚢胞腺腫も注意が必要です。両者とも破裂した際には腹膜偽粘液腫を発症し予後が不良になるため、手術治療をより積極的に考える必要があります。

虫垂腫瘍の症状と頻度

 上述の虫垂粘液嚢腫は虫垂炎の原因になりますが、しばしば慢性経過で無症状に進行し、偶発的に見つかることもあります4。たまに亜急性経過の虫垂炎や繰り返す症例を経験しますが、その際には注意かもしれません。

 虫垂腫瘍は高齢者で多いとはされていますが、40歳以上からリスクが増加するようです8。虫垂周囲膿瘍などの複雑性では約20%、Interval appendictomyの28%で腫瘍が見つかるという報告もありました8,9。ただし、膿瘍を作った症例で腫瘍が発覚したのはすべて40歳以上のようですので、これが若年者にも当てはまるのかは不明ですし、若年者は一旦は保存的治療だけで経過観察をすることが多いなどのバイアスがかかっているかもしれないので、「若年だから安全」とは断言できません。

粘液嚢腫の術前診断

過去の報告では虫垂径が診断に有用とされています4。例えば超音波で15mm以上で感度83%、特異度92%と報告されています10。(なお、同論文では外経毎に感度特異度を計算しており、10mm未満や20mm以上では感度100%や特異度100%となっていますが、n=16と少ないことには注意が必要です)。ただ、「細ければ細いほど粘液嚢腫の可能性は低く、太くなればなるほど高くなる」傾向があるとはいえそうです。同様の報告はCTでもあり、内腔が1.3cm以上とありました4。概ね超音波と同じですので、15mmというのがカットラインとしてはいいのかもしれません。

 その他の特徴として壁の石灰化や嚢胞状拡張(英語のニュアンスがわかりにくいのですが、卵や楕円型のように充満した感じでしょうか。)も有用です4。粘液嚢腫5例の超音波所見をまとめた論文11では、ムチンが主な成分である粘液では膀胱や胆嚢などと違い後方音響増強が観察されず(5名中4名がなかったようです)、虫垂壁との境界も不明瞭になると指摘しています。CTでは観察できない動的な評価も可能で、圧迫すると内部が動いて見えます。特に巨大な虫垂嚢腫の場合にはOnion skin signと呼ばれる所見も見られるようです(波状・曲面状の中輝度成分と低輝度成分が層状になっている感じです。タマネギほど規則的ではなさそうですし、レタスに近い感じがします※筆者感想)12。CTでは検出できない情報(内容物の性状)がある点は、明らかに超音波に軍配が上がります。

超音波検査を追加するべき状況とは?

上記のことを考えると、すでに虫垂炎が確定した患者で超音波検査を追加すべき状況は、

  • 外径15mm以上
  • 慢性/亜急性経過
  • 再発例
  • CTで石灰化がある
  • 40歳以上(高齢者になればなるほど)
  • 膿瘍など複雑性虫垂炎
  • Interval Appendictomy症例
  • (フォローの際などに被爆リスクを軽減したい)

といった、「虫垂腫瘍を疑うときにはたとえCT検査で虫垂炎が発覚していても超音波検査をした方がいいかも」しれません。

明日からの診療に役立てられれば幸いです。

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1. Yabunaka K, Katsuda T, Sanada S, Fukutomi T. Sonographic appearance of the normal appendix in adults. J Ultrasound Med. 2007;26(1):37-43; quiz 45-46.

2. Mittal MK, Dayan PS, Macias CG, et al. Performance of ultrasound in the diagnosis of appendicitis in children in a multicenter cohort. Acad Emerg Med. 2013;20(7):697-702.

3. American College of Emergency Physicians Clinical Policies Subcommittee (Writing Committee) on Appendicitis, Diercks DB, Adkins EJ, et al. Clinical policy: Critical issues in the evaluation and management of emergency department patients with suspected appendicitis: Approved by ACEP board of directors February 1, 2023. Ann Emerg Med. 2023;81(6):e115-e152.

4. Demetrashvili Z, Chkhaidze M, Khutsishvili K, et al. Mucocele of the appendix: case report and review of literature. Int Surg. 2012;97(3):266-269.

5. Higa E, Rosai J, Pizzimbono CA, Wise L. Mucosal hyperplasia, mucinous cystadenoma, and mucinous cystadenocarcinoma of the appendix. A re-evaluation of appendiceal “mucocele.” Cancer. 1973;32(6):1525-1541.

6. Wonski S, Ranzenberger LR, Carter KR. Appendix imaging. In: StatPearls. StatPearls Publishing; 2025.

7. Kwon LM, Lee K, Min SK, Ahn SM, Ha HI, Kim MJ. Ultrasound features of secondary appendicitis in pediatric patients. Ultrasonography. 2018;37(3):233-243.

8. Mällinen J, Rautio T, Grönroos J, et al. Risk of appendiceal neoplasm in periappendicular abscess in patients treated with interval appendectomy vs follow-up with magnetic resonance imaging: 1-year Outcomes of the Peri-Appendicitis Acuta randomized clinical trial: 1-year outcomes of the Peri-appendicitis acuta randomized clinical trial. JAMA Surg. 2019;154(3):200-207.

9. Carpenter SG, Chapital AB, Merritt MV, Johnson DJ. Increased risk of neoplasm in appendicitis treated with interval appendectomy: single-institution experience and literature review. Am Surg. 2012;78(3):339-343.

10. Lien WC, Huang SP, Chi CL, et al. Appendiceal outer diameter as an indicator for differentiating appendiceal mucocele from appendicitis. Am J Emerg Med. 2006;24(7):801-805.

11. Sasaki K, Ishida H, Komatsuda T, et al. Appendiceal mucocele: sonographic findings. Abdom Imaging. 2003;28(1):15-18.

12. Francica G, Lapiccirella G, Giardiello C, et al. Giant mucocele of the appendix: Clinical and imaging findings in 3 cases. J Ultrasound Med. 2006;25(5):643-648.

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