血液培養の消毒はアルコール綿だけで本当に大丈夫か?

感染症
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最近、「血液培養の皮膚消毒はアルコール綿だけでも問題ない」という話を耳にすることが増えてきました。現場では物品が限られていたり、時短目的で簡易化された手技が行われることもあります。クロルヘキシジンを探すのが手間だったり、イソジン消毒した後だと穿刺部位が見にくく探り針になったりすることもよく耳にします。その風潮も相まってか、「アルコール綿だけでもいいというエビデンスもある」という方を目にすることもあります。ですが、本当に、それでコンタミネーション率(汚染率)は変わらないのでしょうか?エビデンスを調べてみました。

この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
たまに全然関係ない話題や読んだ本の紹介もします。

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 結論(先にまとめ)

  • 「アルコール綿だけでも大丈夫」とされる論文は イソプロピルアルコール(IPA)を使用
     → 普段使っている70%エタノール綿とは別物!
  • 70%エタノール単独では、コンタミ率が高くなる可能性がある
  • クロルヘキシジンやIPAを含む消毒薬との比較では明らかに劣る
  • 芽胞菌(例:C. perfringens)にはエタノール単独では無効。鼠径部などでは特に注意が必要

よく引用される論文を確認

おそらくこの論文1)が「アルコールだけでも問題ない」と言われる所以だと思われます。:

Kiyoyama T, Tokuda Y, Shiiki S, Hachiman T, Shimasaki T, Endo K. Isopropyl alcohol compared with isopropyl alcohol plus povidone-iodine as skin preparation for prevention of blood culture contamination. J Clin Microbiol. 2009;47(1):54-58. doi:10.1128/JCM.01425-08

ただしこれは、 IPA(イソプロピルアルコール)とIPA+ポピヨンヨードの比較です。確かに有意差はありませんでしたが、「70%エタノールでOK」という根拠にはなりません。

私たちが日常的に使用している ワンショットプラス(70%エタノール) (https://amzn.to/3GtZAjr)などの製品では、同様の効果があるかは不明です。イソプロピルアルコールの含有されたアルコール綿(https://amzn.to/4cWEbf1)もありますが、プロトコル通りの量や乾燥時間を取れるかどうかも重要なLimitationになるため、いずれにせよアルコール綿だけでは十分な効果が得られない可能性があります。

文献レビューから見た比較(重要!)

複数の消毒薬を比較したシステマティックレビュー2)では、血液培養の皮膚消毒法における複数のRCTが分析されています。

比較RR (95% CI)結論
アルコール vs ポピヨンヨード
0.85 (0.64–1.14)
非劣性(有意差なし)
アルコール vs アルコール+ポピヨンヨード
1.02 (0.74–1.39)
非劣性(有意差なし)
アルコール vs ヨードチンキ
0.97 (0.71–1.31)
非劣性(有意差なし)

ここだけを見ると、「アルコールでもよさそう」と思うかもしれません。

しかし、クロルヘキシジンとの比較では…

比較RR (95% CI)結論
アルコールクロルヘキシジン vs ポピヨンヨード0.33 (0.24–0.46)有意差あり

となっており、クロルヘキシジンアルコール製剤がポピヨンヨードと比較して圧倒的に優れているという結果です。これを考慮すれば、70%エタノール単剤での消毒(つまりポピヨンヨードと同等)は明らかに不十分と考えるべきです。(ヨードを標準手順として採用している病院であれば、それと比較すれば変わらないのかもしれませんが・・・)

芽胞形成菌にはエタノール単剤では無効

  • 芽胞を形成する Clostridium属(例:C. perfringens) はエタノールに抵抗性がある
  • 鼠径部など皮脂腺の多い部位では常在菌として存在し、コンタミ原因になりやすい

実際に、C. perfringensは汚染培養でしばしば検出されますので、採血部位によっては「アルコール綿だけ」は菌種的にも有効性が低いと予想されます。

明日からの診療で気をつけたいこと(まとめ)

  • 「アルコール綿だけでも大丈夫」とされる論文は イソプロピルアルコール(IPA)を使用
     → 普段使っている70%エタノール綿とは別物!
  • 70%エタノール単独では、コンタミ率が高くなる可能性がある
  • クロルヘキシジンやIPAを含む消毒薬との比較では明らかに劣る
  • 芽胞菌(例:C. perfringens)にはエタノール単独では無効。鼠径部などでは特に注意が必要

確かにイソジンやクロルヘキシジンなどの使用がためらわれる場面があるかと思いますし、省略せざるを得ない場合もあると筆者自身も感じる時はあります。ケースバイケースで考えることが必要だと思いますが、一概に「アルコール綿だけでもコンタミ率は変わらないから消毒しなくてOK!」とは言い難いということは考えておいていただければ幸いです。

明日からの診療に役立てられれば幸いです。

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引用文献:

1)Kiyoyama T, Tokuda Y, Shiiki S, Hachiman T, Shimasaki T, Endo K. Isopropyl alcohol compared with isopropyl alcohol plus povidone-iodine as skin preparation for prevention of blood culture contamination. J Clin Microbiol. 2009;47(1):54-58. doi:10.1128/JCM.01425-08

2)Caldeira D, David C, Sampaio C. Skin antiseptics in venous puncture-site disinfection for prevention of blood culture contamination: systematic review with meta-analysis. J Hosp Infect. 2011;77(3):223-232. doi:10.1016/j.jhin.2010.10.015

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