医師に必要な仕事術・時間管理術

仕事術
はじめに
本記事の内容は医学的エビデンスに基づく医療従事者を対象とした一般的な情報提供を目的としており、患者さんを対象とした医療アドバイスではありません。また、特定の医薬品を推奨するものでもありません。詳細は 制限・免責事項 および 著作権ポリシー をご確認ください。

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この記事では、総合内科医として、またチーム長として、日々研修医・レジデントに伝えている「現場で使える仕事術・時間管理術」をまとめました。筆者自身、3,4年目の後期研修医の頃は仕事がなかなか終わらず、19時どころか、21時ぐらいまで病棟にいて延々と仕事をしていました。そんな毎日を変えられた仕事術です。記事の内容はいろいろな書籍で書かれているビジネス本を医師向けにした内容ですが、臨床の現場で使えるように加筆しています。

想定しているのは、いわゆる「指導医+レジデント+研修医」の3人体制向けですが、主治医制の病院でも応用可能です。明日の朝から早速使える内容を意識して書いています。仕事が終わらず悩んでいる先生方に是非読んでいただきたい内容です。

記事を執筆するうえでいろいろな本を読んできましたが、この2冊が非常にまとまっていて読みやすいです。医師に限らず、是非読んでいただきたい本ですので、超おススメです。

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この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
たまに全然関係ない話題や読んだ本の紹介もします。

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1. 朝にToDo listを作成する

一番筆者が大事にしている仕事術です。これを怠ると一日の流れが想定できず、「律速段階や緊急度」「午後に回す」などの仕事術をそもそも発揮できません。すべての仕事術の基本となるものです。

医師(特に勤務医)の仕事は多数あります。特に患者毎であれば、バイタルや食事量、採血や採尿検査の確認、処方・点滴オーダー、心電図や超音波検査結果の確認、レントゲン/CT/MRIの確認、培養結果の確認、他診療科へのコンサルト、退院に向けて家族やMSWと電話…等様々な業務を毎日行う必要があります。これを毎日抜けることなく行う必要があるのですが、果たしてそれをすべての患者で暗記することはできるでしょうか。筆者はそれをしっかりToDoListとして作成して、一個一個チェックしながら診療しています。

*ワンポイントアドバイス*
残務や保留タスクは赤ペンやマーカーで目立たせるのも有効です。例えば「点滴オーダー未済」や「明日のコンサルト保留」などは、目に入る工夫をしておくことで見逃しを防げます。午後に回す残務は赤、明日に回す残務は青・・・という感じにしておくと視覚的に見やすいです。
*ここで注意*
・ToDoリストを作るときには、横並びにして、目線がずれないようにすること。
 ページのあちこちにメモをしてしまうと、どこにあるのかわからなくなってしまいます。

ToDoとメモは分けて、ごちゃ混ぜにしないこと。
 ToDoの隣に検査値や状態(K2.8やBP162など)を直接書き込むと、情報の整理が崩れ、何をすべきか見えにくくなります。

2. 午前中に最大効率で業務を行う

数々の仕事本でよく言われていますが、午前中は仕事の“ゴールデンタイム”です。医師に限らずそれは言えて、どんな職種でも午前中は集中力が高く、判断力も鋭いです。午後は疲労も溜まるうえに、昼食後で眠気も多く、業務効率は下がります。そのため、可能な限りToDoの大部分を午前中に終わらせることが重要です。

また、午後は緊急入院や処置対応が突然入る時間帯でもあります。だからこそ、「午後は緊急対応用のバッファ」と考え、午前中を最大限に使って業務を進める必要があります。

*ワンポイントアドバイス*
なるべく午前中にカルテは書く!
 カルテは単なる診療記録ではなく、他者へのメッセージとアナウンスでもあります。自分たちのカルテを見て、看護師や理学療法士たちは動きます。他診療科へコンサルトするのであれば、猶更です。そのため、一日の最後にすべて書くのではなく、「午前中に一旦書きあげて、午後に変更があるなら追加する」というのがオススメです。
*ここで注意*
朝カンファは最小限に!
 チーム医療を支えるうえで大事な業務の一つですが、仕事のゴールデンタイムを潰す要因でもあります。カンファレンスは必要ですが、あくまで「昨晩からの経過とイベント」「方針のすり合わせ」「ToDoの確認」に絞りましょう。詳しい議論や振り返りは、昼や午後など別の時間帯でも構いません。

3. 律速段階と緊急度/重要度を意識して行動する

医師として働いている業務の中にも、他業種と同じように緊急度や重要度の異なるタスクがあります。患者急変が緊急度も重要度も高い最も優先される業務ではありますが、それほどとは言わないまでも優先順位の高いタスクがあります。

筆者的に緊急度・重要度共に高いタスクは、「他のタスクの律速段階になるタスク」だと考えています。具体的には、採血検査の確認や、他診療科へのコンサルトです。

*ここで注意*
昼頃になって低カリウム血症に気付き、夕方ギリギリに採血フォローをしたことはありませんか?」
トロポニンが高くて、午後になって循環器内科に診察依頼したことはありませんか?」
「一度回診したのに、予期せずCRPが高くて、もう一度回診したことはありませんか?」

これらを昼以降に気づくと、補正や処置が夕方までズレ込むことになります。午前中のToDoは多く、つい後回しになってしまったり、回診が長引いてしまうかもしれませんが、業務の途中でいったん見ておくことをオススメします。早めの確認で、1日の流れが格段にスムーズになります。

4. 無理に午前に詰め込まない:業務の緊急度で整理する

しかし、「全部午前にやらなきゃ!」と無理やり詰め込んでも、かえって効率は下がります。緊急度が低いタスクであれば、思い切って午後に回しましょう。書類関係(入院診療計画書・紹介状・返書などの書類業務)は午後でも構いません(というか紹介状の返事は翌日以降でも構わないです)。

急変対応などでどうしても難しいのなら、
・安定している患者の診察
・午後でもいい処置(例:点滴が漏れたけど、15時までに刺し直せばよいサーフローなど)
も午前中に行う必要はないです。

急変対応などが重なった日は、あえて「後回しにする判断」も仕事のうちです。

*ワンポイントアドバイス*
こういった午後でもいい仕事は、チームの他の先生とも共有して一緒に行う方がいいと思います。例えば指導医が午前外来で、午後から回診をするときに一緒に診察…というのも筆者的にはいいと思います。レジデントが午前外勤で、午後から病棟…というケースも同様です。

6. 「フレックスタイム制」なら早朝回診を活用する

早朝…とはいってもそこまで早朝ではないです。9時にスタートの病院であれば、8-9時頃までの1時間で十分です。この時間は実は一日の中で最も静かで、電話や処置などでの業務中断が起きにくい時間帯です。日勤に切り替わった後からは看護師や検査部からの電話が多く、そのたびに業務が止まってしまいます。業務時間前であればそれが少ないので、効率的に回診ができるのはおすすめです。

エビデンスによると、中断されたタスクへの再集中には平均23分かかる(Gloria Mark et al.)ともされています。ただでさえ業務中断が多い医療現場では、中断リスクの少ない時間帯にまとめて終わらせるだけで、1日全体の効率が大幅に上がります。

*ここで注意*
・早朝回診が残業になることもある
早朝回診は「フレックス勤務内」が基本だと思っています。「残業推奨」ではなく、「勤務時間の柔軟な調整」のためだからです。制度が整っている病院でのみ考えるべきと筆者は考えます。

・他業種の業務を中断させない
筆者たち医師だけでなく、看護師等他の職種でも同様です。
「看護師たちが話し合っているところに、わざわざ間に入って話しかけてませんか?」
「一日に何度も何度も電話をかけていませんか?」
筆者は極力後でもよければ話しかけず、電話はまとめて一気に話すように心がけています。

7. パレートの法則 × ECRS法で、効率を最大化する

ここまで紹介した仕事術は、すべてこの2つのフレームワークに集約できます。

パレートの法則(80:20の法則)

「全体の8割の成果は、2割のタスクから生まれる」という有名な法則です。逆に言えば、2割のタスクを見直すだけで、8割の成果につながられます。「自分が一番時間を取られている2割」を見つけ修正することが大事です。

何に一番時間を取られているのでしょうか?
回診でしょうか?移動時間でしょうか?電話でしょうか?オーダーでしょうか?カルテでしょうか?

そこはどうすれば少なくできるのでしょうかを、ECRS法を使って業務時間を削減します。

ECRS法(改善のための4ステップ)

ステップ 内容具体例
Eliminate(排除)やめる無意味な確認作業
何度もあるカンファレンス
Combine(統合)  まとめる回診と処置
処方と点滴オーダー
Rearrange(順序変更) 順番や人を変える午前集中型のスケジュール
午後でもいいなら午後に。
指導医やレジデントにお願いする
Simplify(簡素化) シンプルにする短いカンファ
カルテ記載のテンプレ化
*ワンポイントアドバイス*
Rearrangeの部分に関しての補足です。順番だけでなく人でも同じように言えます。
筆者は個人的にですが「たとえ研修医であっても指導医に対して業務を依頼しても構わない」と考えています。もちろん、自分で考えたり、やろうと思う努力は必要ですが、優先順位の高いタスクができずに患者さんに害が及んでしまうぐらいであれば業務を依頼するのは必要と考えます。

最後に:自分の時間=患者の時間

ここまで自分の業務をいかに効率的に行うかについて記事を書いてきましたが、効率化した業務時間は、すべて患者さんの診療に直結しています。

  • タスクを整理・可視化し、ToDo Listを作る
  • 午前中に最大効率で業務を終わらせ、午後に備える
  • 無駄な仕事を減らし、集中できる時間を確保する
  • 合間にできた時間で、臨床的疑問点を解決したり、抄読会や学会の準備に充てる。
  • 業務時間内に仕事を終え、身体的にも精神的にも明日に備える。

チーム全体でこれを意識できれば、診療の質も働きやすさも格段に向上するはずです。

医療はチーム戦。効率よく働くことは、自分を守り、患者を守ることでもあります。
ぜひ、あなたの職場で明日から実践してみてください。

業務効率化にオススメの本

冒頭でも話しましたが、以下2冊が実際に読んで読みやすくためになりました。オススメの2冊です。
特に研修医や、仕事で悩んでいるレジデントなど、若手医師に読んでいただきたい本ですので、是非周りにも勧めてみてください。

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