前回に続いて、読書にまつわる書籍の紹介です。今回もあまり関係ありません。
でも最近はむしろ、「仕事に直接関係ない本」をもっと読むべきなんじゃないかと感じており、孫ン中で読んだ本でおススメだったので紹介です。
今回紹介するのは、『なぜ働くと本が読めなくなるのか?』(谷崎由依・朝日出版社)という一冊です。もともとは、前回紹介した『もういちど、本屋へようこそ』を読んだ流れで、関連書として出てきたものでした(前回記事:書籍紹介「もういちど、本屋へようこそ」)。
実際に読んでみると、タイトル以上に中身が濃く、働きながら本を読むことの難しさを、単なる「忙しさ」の一言では片付けずに、言語化してくれています。印象的なフレーズはたくさんあるのですが、著作権の都合もありここでは割愛します。ですが本を読まなくなった、読めなくなった感覚に心当たりがある方には、きっと響く内容だと思います。
「活字離れ」は今に始まったことではない
このテーマに関して、興味深い点がいくつかあります。たとえば、「若者の活字離れ」という言葉そのものが、実は何十年も前から言われていたということ。複数のビジネス書では、1970年代時点ですでにそうした指摘があったようです。
紹介書籍以外にも、下記論文で指摘されています。(孫読みしようにも元論文へたどり着けないですが…)
若者は読書離れしているとの言説は,1980 年代までには常識化している. 1970 年には出版業界紙の編集者が「若者の活字離れという現象は恒常化し, いわゆる教養派の出版物の売り上げが落ちるという事態」(植田 2008 : 64)を憂慮している.
清水一彦:「若者の読書離れ」という“常識”の構成と受容, 出版研究, 45, 117-138 , 2014
つまり、僕が「ここ最近のことかな」と思っていた読書離れの傾向は、もっとずっと前から続いていたということ。これはなかなか衝撃です。
2000年代に入り、インターネットが普及すると急激に読書人口が減り始めます。やはり情報の取得手段が本からインターネットに移行したことが大きいように思います。現に、2008年ごろには、Googleで調べればほとんどの情報がすぐ出てくる時代になっていました。「ggrks(ググれカス)」なんてネットスラングが通用していた時代です(今はもう死語ですけど…)。そんなGoogle検索も最近はSEO対策ばっちりの似たような記事ばかりで、検索しても欲しい情報にたどり着けづらいです。
次の情報源は何でしょうか。ChatGPTやGeminiでしょうか。欲しい情報にたどり着くのは簡単ですが、真偽不詳でHalsinationが多数起こることには参りますが。
医学の世界でも“本離れ”は進むのか?
このような流れは医学の世界でも進んできたのかもしれません。ChatGPT曰く、昔は「朝倉内科学」や「Harrison’s Principles of Internal Medicine(つまりハリソン内科学です)」など、重厚な書籍を主体に、JAMAやNEJMを郵送で取得していたようです(Halcinationだったら申し訳ないです)。その後インターネットが普及し始めた1990年代~2000年前半ぐらいにPubmedとUpTodateが使えるようになり、レジデントマニュアルや各社の速習シリーズ、近年はYouTubeやケアネットTVで学ぶ人が増えています。すでに始まっていますが、ChatGPTやGeminiのような生成AIが、さらに知識取得の方法を変えていくのでしょう。
将来、「レジデントの医学書離れ」なんて言葉が出てくるかもしれません。(レジデントマニュアルを医学書と言っていいのかは賛否両論あると思いますが…)
知りたい情報だけでいいのだろうか?
医師には今後ますます「情報の取捨選択力」が求められると言われていますが、果たして自分の専門分野にしか目を向けない姿勢でいいのでしょうか。たまたま読んでいたことが、当直のときに役立ったり、患者さんとの雑談で会話のきっかけになったりもします。たとえそれは医学関係ないものでもいいのかもしれません。実際に、今回紹介した書籍の本文中でもそこに触れています。
そういった“ノイズ”のように思える知識が、実は現場で効くこともあるように思われます。要約やまとめ記事では削られてしまうような脱線や、寄り道、背景の描写、そういうものを含めて読むことで、初めて“その世界に触れた”という実感が得られる。だからこそ、たとえ今すぐ役に立たなかったとしても、読む意味はあると思っています。

Amazonであれば中古でも購入できます。発刊がだいぶ前なので新刊は厳しいんじゃないかなぁ、と。
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