今回は論文紹介です。最近、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)とStenotrophomonas maltophiliaの同時感染について気になり、文献を調べてみました。どちらもブドウ糖非発酵菌であり共通点も多いのですが、それ以上に菌同士の相互作用で病原性や薬剤耐性が誘導されることがあるようで興味深いと感じます。
同時感染による相互作用
2017年に発表された緑膿菌とS. maltophiliaの同時感染に関するレビュー論文では、緑膿菌とS. maltophiliaの同時感染の有無によって死亡率の差があると報告されています。そりゃあ二つの病原体にかかったら死亡率は上がるに決まっていますが、緑膿菌単独で12.5%、S. maltohilia単独で14.6%、同時感染ではなんと64.0%(!)です。P. aeruginosaに限らず、Acinetobacter baumanniiなどでも同様のことがあるのかもしれません。混合感染により単独培養の約100倍のバイオフィルム形成が観察され、抗菌薬耐性についても100〜1000倍近く増加することも推測されています。
ブドウ糖非発酵菌たちは共感染しやすい遺伝的な何かがあるのかもしれません。
S. maltophiliaに関するレビュー・メタ解析論文
2024年3月にS. maltophiliaに関するメタアナリシスとレビュー論文が発表されていました。11,438件の文献を対象にスクリーニングし、289件の研究をメタアナリシスに含めています。世界各国の耐性率が比較されており、以下のような結果が示されています(元論文を直接見るのがおすすめです)。
- ST合剤(ST合剤:TMP/SMX):耐性率17%(アジア)、北欧・欧州(13%)よりやや高め
- ミノサイクリン:耐性率3%、比較的良好
- レボフロキサシン:耐性率17%(ST合剤と同等レベル)
- フェトロージャ:耐性率1%
- セフタジジム:耐性率47%(臨床感覚と一致)
ミノサイクリンの耐性率が非常に低い点はいいです。日和見感染症をきたすぐらいの全身状態なので、腎機能障害や電解質異常、あるいは血球減少などで、ST合剤が使いにくいときは度々あるでしょう。そんな時にでも使いやすいテトラサイクリンを耐性を気にせず使えるのは非常に良い利点です。
一方、レボフロキサシン等のキノロンを使うのは、上述のような緑膿菌やアシネトバクターなどとの共感染のリスク高い以上安易には使いづらいです。実際、S. maltohpiliaが喀痰から検出されているとき、緑膿菌も(起因菌にはなっていなくとも)検出されていることってありますよね。それも、各種βラクタムに高度耐性を獲得した緑膿菌が…。そんな緑膿菌にさらにキノロン耐性なんて取られた際には大変です。
そういった意味でも、緑膿菌との同時感染について、今後注目される可能性があると考えます。
臨床での注意点と所感
S. maltophiliaは、院内感染でときおり問題になる日和見感染症の原因菌であり、治療選択がやや難しい細菌です。カルバペネムなどのβラクタム系が基本的に無効であることは周知の通りですが、治療選択肢としては以下のことに留意が必要です。
- ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系:副作用も少なく、使いやすいが、静菌的。
- ST合剤やキノロン系:殺菌的ではあるが、耐性率が10〜20%程度あるため注意が必要。特にキノロンは緑膿菌側の耐性獲得リスクもある。
特に、緑膿菌との同時感染が疑われる症例では、相互作用により病原性や耐性が変化するリスクがあります。実臨床でもバイオフィルム形成や治療抵抗性が強まる印象があるため、こうした組み合わせには警戒が必要です。
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