カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の治療選択肢

感染症
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最近、メロペネムやイミペネムを含めたすべてのβラクタム系抗菌薬に耐性を示す多剤耐性緑膿菌の症例を経験しました。今後、こうしたカルバペネム耐性グラム陰性桿菌(CRGNB:Carbapenem-Resistant Gram-Negative Bacilli)の治療はますます重要になってくると思います。そこで、セフィデロコールやセフタジジム+アビバクタム(ザビセフタ)など、新規抗菌薬や新規β-ラクタマーゼ阻害薬、その臨床的アプローチについて整理しました

この記事を書いた人
Dr.Tk

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そもそもカルバペネム耐性とは?

「カルバペネム耐性グラム陰性桿菌(CR-GNB)」と聞くと、カルバペネマーゼ産生菌(CPE)を想像しがちですが、実臨床で遭遇する耐性機構はこれに限りません。大きく分けて3つのタイプに分類され、それぞれでアプローチが異なります。

機構1:非CPE(non-CPE)

ポーリン欠損やEffluxポンプ活性化により、カルバペネム系抗菌薬が菌体内に入らなくなったり、入ってきてもすぐに排出できるように耐性化した菌たちです。カルバペネマーゼは産生していないですので、MICは高くとも確認試験では陰性です。この株たちでは、高用量カルバペネムを延長投与(extended infusion)したりしますが、MICが比較的低いことが必要ですし、extended infusionに加えて併用療法(アミノグリコシド、ホスホマイシン、チゲサイクリンなど)が望ましいとされています。

 セフトロザンタゾバクタムなども有効な可能性があり、感受性測定を検討します。

機構2:CPE(カルバペネマーゼ産生菌)

 いわゆるこれは、CPEかつCREのグループです。クラスによって治療選択が大きく異なるようですが、日本においてはほとんどがIMP型やNDM型なので、後述する理由から治療方針はほとんど変わらないのでしょう。

 地域性があり、例えばKPC型(K. pneumoniaeから見つかったカルバペネマーゼだから命名された)は米国で主流ですが、日本では1%程度です。こちらであれば後述するアビバクタムやバルボバクタム(バルボバクタムは日本ではまだ使えませんが…)が活性を阻害できます。米国ではOSA-48型も多いですが、こちらもアビバクタムで阻害可能です。

 一方、日本で頻度の多いIMP型(イミペネムに耐性になった株から見つかったから命名された)は新規βラクタマーゼ阻害薬で阻害できません。日本75%を占めるで一番多いカルバペネマーゼなのですが残念です。次に多いのはNDM型(ニューデリーで見つかったから命名された)は、近年15-20%近くまで増加してきていますが、こちらも新規βラクタマーゼ阻害薬で阻害が難しいです。

機構3:染色体にカルバペネマーゼを有する菌種

 Stenotrophomonas maltophilia、Elizabethkingia spp.などの起因菌はもともとカルバペネマーゼを染色体上に保有しています。その為、例えばコロニー性状や質量分析などで感受性検査結果が事前に判明しているのであれば、感受性結果を待たず治療変更が検討されます。

セフィデロコールの特徴と立ち位置

鉄取り込み機構(シデロフォア)を利用した新規セフェム系抗菌薬で、ポーリンに依存せず細胞内へ侵入するため、ポ-リン欠損株にも有用です。カルバペネマーゼでも分解されにくく、CPE、non-CPEに関係なく使用可能です。抗菌活性については今後の知見が待たれます。

 気になる点とすれば、投与時間の件でしょう。3時間投与が基本なので、1日9時間は抗生剤投与にルートが必要となってしまいます。また、中枢移行性や前立腺への移行性、鉄過剰症や、キレート材の併用時にも使えるのかは筆者はまだ知りません。

セフタジジム/アビバクタム+アズトレオナム療法

 アズトレオナムはIMP型やNDM型等のMBLで加水分解されないため単剤でも本来可能なはずですが、実際にはそういった菌たちは他のβラクタマーゼ(AmpC等)も保有しているため、それらによってアズトレオナムが分解されてしまいます。米国であればアズトレオナム/アビバクタムの合剤が使用できるのですが、現時点では日本では使用できないので、アズトレオナムにザビセフタ(この中のセフタジジムは本来不要)を併用する必要があります。

β-ラクタム以外の選択肢

  • アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシンなど):腎毒性・聴覚毒性に注意
  • チゲサイクリン:テトラサイクリンから派生して作られたグリシルサイクリン。緑膿菌には無効
  • ホスホマイシン:感受性あれば選択肢。ただし単剤では抗菌力がやや弱い
  • ST合剤(TMP/SMX):高用量投与が必要で、高K血症や腎障害に注意
  • コリスチン:腎毒性と神経毒性のリスクがあり、他薬が無効なときの選択肢

などが治療の選択肢となるので、βラクタム系抗菌薬のextended infusionや新規βラクタマーゼ阻害薬配合薬との併用療法で検討されます。

まとめ:実臨床でのアプローチ

  1. 染色体性カルバペネマーゼ菌種(例:Stenotrophomonas) → β-ラクタム以外を積極的に選択
  2. 非CPE型(non-CPE) → 高用量カルバペネム・extended infusion(MICによる)の検討
  3. CPE型 → 酵素型に応じて戦略を変更
    • IMP/NDM → セフィデロコール or セフタジジム+アビバクタム+アズトレオナム
    • KPC → セフィデロコール or セフタジジム+アビバクタム
  4. いずれも、β-ラクタム系以外の抗菌薬併用を検討

が治療の流れになりますが、いずれも治療は複雑かつ副作用リスクが高いこともあり、感染症専門医に早期相談が望ましいように思われます。

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