Enterococcus faecalisに対するイミペネムとメロペネムの比較-モンテカルロシミュレーションを通じて-

感染症
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先日、Enterococcus faecalisに対して諸事情によりカルバペネムで治療を行う機会がありました。通常であればアンピシリン(ABPC)を使用するところですが、薬剤アレルギーや混合感染などで使えない場面もあります。今回は「E. faecalisに対してはメロペネム(MEPM)は活性が弱い」とよく言われる点について、あらためて検証してみました。以前から「イミペネム/シラスタチン(IPM/CS)の方が活性が高い」と言われていましたが、それが本当なのか、モンテカルロシミュレーションを使って比較してみました。

この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
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既存報告の紹介

1998年に発表された以下のレビューでは、IPMとMEPMの抗菌活性の違いが論じられています。この論文では、「グラム陽性菌に対してはIPMはMEPMと比較して2〜4倍の活性がある」とされています。一方で、グラム陰性菌ではMEPMの方が活性が高いとされています。根拠はEnterococcus faecalisに対するMIC90(90%の菌株を抑制する最小濃度)を比較すると、IPMが2 μg/mL、MEPMが8 μg/mLであるから、のようです。

Zhanel GG, Simor AE, Vercaigne L, Mandell L; Canadian Carbapenem Discussion Group. Imipenem and meropenem: Comparison of in vitro activity, pharmacokinetics, clinical trials and adverse effects. Can J Infect Dis. 1998;9(4):215-228. doi:10.1155/1998/831425

ただし、これはあくまでMICの“縦読み”であり、実際の投与量や血中濃度を考慮しなければ臨床的な意義は限定的です。

モンテカルロシミュレーションにて%T>MICを比較してみる

抗菌薬の有効性をより適切に評価するには、%T>MIC(1日のうちで血中濃度がMICを上回っている時間の割合)を比較する方が理にかなっています。今回はシミュレーションソフトを使ってこの値を検討してみました。

補足:%T>MICとは?
 1日のうち血中濃度がMICを超えている時間の割合のことです。
 カルバペネム系抗菌薬では、%T>MICが40%以上あると有効とされています。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2391264/

使用ソフト:BMs-Pod

今回のシミュレーションには、熊本大学の薬剤師の先生(尾田一貴先生)が開発されたBMs-Podという無料ソフトを使用しました。性別・年齢・体重・腎機能などを入力し、抗菌薬・投与量・投与時間を指定するとシミュレーション可能です。

Webサイト:https://bmspod.web.fc2.com/

Enterococcus faecalisのMIC値の仮定

実際に経験した症例では、MEPMのMICは測定されていなかったため、公開データをもとにMIC90を仮定しました。

出典:四学会合同抗菌薬感受性サーベイランス
(日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会、日本環境感染学会)

2014年データによると、E. faecalisのMIC90はIPMが1、MEPMが8となっており、1998年のデータとほぼ一致しています。

データベース:https://www.3ssp.jp/database/surgical/mic-5090

実際にシミュレーションをしてみる

では実際に上記のMICと想定してBMs-Podでシミュレーションしてみます。

仮定患者:50歳男性、170cm、70kg、Cr 1.0 mg/dL、Alb 3.5 g/dL

IPM/CS 500mg 6時間おき vs MEPM 1g 8時間おき

結果的には%T>MICはIPM/CSで56.3%、MEPMで47.5%です。

どちらも有効とされる40%は超えていますが、IPMの方が優れた結果となりました。MICの2管差はやはり大きいようです。

それぞれExtended infusionにするとどうなるか?

先ほどと同じ条件で、投与方法を3時間かけて点滴(Extended Infusion)に変更してみます。

一気に%T>MICは上昇し、IPM/CSで77.3%、MEPMで60.0%となります。

それぞれmax doseにしてみるとどうなるか

Sanfordから引用したmax doseにそれぞれしてみます。IPM/CS 1g 6時間ごと、MEPM 2g 8時間ごとの比較です。

max doseだと%T>MICはIPM/CSで67.5%、MEPMで66.3%です。

ちなみにABPCでもシミュレーションすると、

ABPCの場合も一緒にシミュレーションしておきます。症例は同じで、ABPCを2g 6時間ごとと、4時間ごとで比較しました。MIC90は2ug/mlです。

ABPCであれば2g 6時間ごとでも89.3%、2g 4時間ごとでは100%になっています。
やはりE. faecalisに対しては使えるならばABPCの方がよさそうです。

Limitation(限界点)

シミュレーションはあくまで理論値であり、腎機能の変動体液量の変化などで実際の血中濃度は大きく影響されます。

特にIPM/CSは腎臓で代謝されやすいという点も考慮が必要です。

MICについても、今回はMIC90を仮定して行っているため、実際の菌株がIPM 1、MEPM 2 μg/mLであれば両者の効果は近い可能性もあります。

まとめ

Enterococcus faecalisに対してカルバペネムを使わざるを得ない場面では、既存報告およびシミュレーション結果からは、MEPMよりもIPM/CSの方が理にかなっている可能性があります。
ただし、生体内での代謝や体液量など数々のlimitationがあることには注意が必要です。

Dr, Tk
Dr, Tk

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