今回は血液培養のコンタミネーションに関する記事です。
ICUでは、末梢穿刺が困難あるいは危険なケース(例:強い浮腫、出血傾向、抗血栓薬服用…etc)にしばしば遭遇します。そうした場面では、通常のように末梢穿刺が難しいことがあります。そのような際に「動脈ライン(A-line)からの逆血採血」が妥当かどうか、報告をもとに整理しました。
カテーテルからの逆採血とコンタミネーション率
中心静脈カテーテルや動脈ラインからの逆採血におけるコンタミネーション率について調べた報告があります。CVからの逆血採血はコンタミ率が多いようですが、動脈ラインに関しては末梢穿刺と同等のコンタミネーション率という報告が存在します。
CVからの逆採血
過去の報告では、CVからの逆採血におけるコンタミネーション率は3.8%と高い数値が示されています。報告によってさまざまで、10%以上と報告されているものもあります。おそらくデバイスや手技によっても大きく変わるかもしれません。コンタミネーションをどう定義するのか、対象としているカテーテルはCVカテなのか、血液透析カテーテルなのか、あるいはポートなのかなど様々あるかと思われますので一概には言い難いです。ただし、少なくとも末梢穿刺よりもコンタミ率が高いように思われます。
動脈ラインからの逆採血
以下は2023年に日本から報告された論文になります。オープンアクセスではないので抄録ベースでの内容になりますが、末梢穿刺:0.3% vs 動脈ライン逆採血:0.7%と、差のない結果でした。結構びっくりな方もいるのではないでしょうか。確かに動脈ラインからコンタミしている症例は体感的には少ないですが、末梢穿刺と同等というのは驚きです。
上記の論文も組み入れたメタアナリシスが2025年に発表されています。同様に、重篤患者においては静脈穿刺と比べて差がないと報告されています。
個人的に思っているのは、動脈ラインは栄養のある薬剤(高カロリー輸液や脂肪製剤、溶解用のブドウ糖液)を使わない上に、日常的に頻回に採血・フラッシュを行うため菌がライン内に定着しにくいのでは?とも思っています。
ICUにおける2セット血液培養プロトコール
従来、カテーテル血流感染症の診断基準的にも、「CVから1セット、末梢穿刺から1セット」といった組み合わせが推奨されていました。しかし、複数ライン(CV、A-line、透析カテ、IABP、ECMO、Impella…etc)が存在する場合、CRBSI診断に用いる「差分時間(differential time to positivity)」の基準は適用困難です。仮に、動脈ラインのコンタミネーション率が末梢穿刺と同等であるならば、「疑わしいカテーテルからの逆血採血+A-line」という組み合わせも選択肢になり得るように推測されます。
Limitation(限界点)
既存の報告は患者背景が限定的で、カテーテルの挿入部位(橈骨動脈・上腕動脈・大腿動脈)、成人か小児か、によっても結果は変わり得ることには注意が必要です。また、ダブルコーテーションをした際には解釈が問題になります。したがって、「動脈ライン=末梢と同等だから代わりでOK」と断言するのは時期尚早と管理人は考えます。
まとめ
ICU等で末梢穿刺が危険・困難な場合、動脈ラインからの逆血採血を末梢穿刺の代替とする方法は一案になり得ます。ただし、これは一部報告に基づく推測であり、患者背景、挿入部位、年齢などで結果は異なる可能性があります。一般的に標準化してよいかどうかは、今後のさらなる検証が必要と考えられます。

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