はじめに
感冒症状は内科外来でよく遭遇する機会の多い症状ですが、中には重大な疾患が隠れていることも少なくありません。「咳」「のどの痛み」「鼻水」に分類しつつアプローチしていく方法が有名ですが、その中でも「のどの痛み(咽頭痛)」は、単なるウイルス性の上気道炎だけでなく、扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎など、重大疾患の入り口であることがあります。
今回は、筆者が日常診療で咽頭炎を診るときに意識している視点をテーマにまとめました。
- 感冒のアプローチ(咳・咽頭痛・鼻水)
- 咽頭所見の見方(どこを見るか、何が見えるか)
の2つに分けて整理しておきます。
せき・のど・鼻水のバランスに注目する。
かぜ症候群の診察でまず考え、かつ、最も大事なことです。「せき・のど・鼻水」のバランスに着目し、何が主たる症状かで場合分けをします。よくある図ですが、こんな感じですね。多少の程度の差、多少のタイミングの差こそあれ、バランスが整っていることが普通感冒の特徴です。

このように分けた上で、それぞれの型に応じて鑑別を進めていきます。たとえば「咳が目立つなら肺炎」「のどが強く痛いなら咽頭炎」「鼻水が続くなら副鼻腔炎」といった形で、初期の鑑別がしやすくなります。多くの場合はウィルス性で自然軽快しますが、中には抗菌薬が必要な疾患や、そもそも感染症ではないこともあります。致死的な疾患群を否定していくことが重要です。
| 主な症状 | 疑われる病変・疾患 |
|---|---|
| 咳が中心 | 多くは下気道感染(気管支炎) 肺炎、肺化膿症 肺癌 気胸 膿胸 肺塞栓 |
| のどの痛みが中心 | 多くは咽頭炎 killer sore throat ※急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Ludwig’s angina,Lemierre症候群 心筋梗塞 心筋炎 大動脈解離 椎骨動脈解離 |
| 鼻水・鼻づまりが中心 | 多くは鼻炎 急性副鼻腔炎 |
咽頭痛を診たときに必ず確認すること
上述の感冒症状の中で、特に気を付けるべきは強い咽頭痛を呈する場合です。まず最初に確認しておきたいのがred flagの有無です。これがある場合は、ただの風邪では済まない可能性があります。
- 開口障害(口が開かない) → 扁桃周囲膿瘍や深頸部感染症を疑う
- 嗄声や呼吸苦 → 喉頭蓋炎などの上気道閉塞リスク
- 嚥下不能や流涎 → 強い痛みや膿瘍形成を示唆
大きく口を開けて咽頭を観察できるような場合や、普通に会話ができたりしているようであれば、開口障害や嗄声、呼吸苦はなしとみてよいかと思われます。一方、嚥下困難に関してはclosed questionで聞くことがことが重要です。
咽頭観察のポイントと特徴的な所見
咽頭診察のポイントは、「左右差と分布」を意識することです。のど全体が赤いだけでは、どの感染症かまでは分かりません。これだ、という感染症がわかることは多くはありませんが、一発診断ができるケースもありますので、以下のポイントに注目しつつ診察します。
① 扁桃の腫れと白苔
- 扁桃の左右差をチェック。片側だけ強く腫れていれば、扁桃周囲膿瘍を疑います。
- 扁桃腫大と発赤と共に白苔が厚く付着している場合は、GASを考慮。
- ジフテリアでは白くべったりした偽膜(筆者はみたことありませんが・・・)。
② 口蓋垂の位置
- 口蓋垂が片側に偏っていれば、膿瘍による圧排の可能性があります。
③ 咽頭後壁の発赤と濾胞
- インフルエンザで見られる「イクラ状のインフルエンザ濾胞」は有名です。
(COVID-19でも同様の濾胞が見られる印象がありますが…)
④ 軟口蓋・口蓋弓・舌根部
- 軟口蓋や口蓋弓に小さな水疱があれば、ヘルパンギーナを疑います。
おわりに
感冒で来院される患者は多いですし、多くはウィルス感染で自然軽快しますが、中には上記のような重大疾患が隠れていることもあります。「せき・のど・鼻水」のバランスに注目して鑑別を進め、とくに咽頭痛が強い場合には積極的に咽頭観察をしてred flagやkiller sore throatを否定することが重要です。
おすすめ関連記事:
医師に必要な仕事術・時間管理術:
~忙しい研修医・レジデントが“ラクになる”時間管理術とは? ~
https://giminfection.com/2025/05/30/time-management-for-residents/
学会や勉強会の効率的なスライド作りの仕方:
~スライド作りをスムーズかつ効率的に作ろう!プレゼン資料の作り方~
https://giminfection.com/2025/06/05/how-to-create-medical-slide-presentation/
感染症研修・内科研修・レジデント向けにおすすめの本やアプリ:
~感染症研修に必須!買ってよかった本ランキング~
https://giminfection.com/2025/05/04/resident-books-infectious-diseases/
買ってよかった本たちまとめ:
※医学に全然関係ない本もあります
https://giminfection.com/category/book-introduction/


コメント