「ファスト教養」と医学記事紹介

仕事術
はじめに
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この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
たまに全然関係ない話題や読んだ本の紹介もします。

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はじめに

最近、本を読む習慣が少しずつ戻ってきていて、また何か面白い本ないかなと思いながら探している中で出会ったのが、今回紹介する「ファスト教養」という一冊です。前回(買ってよかった本「なぜ働くと本が読めなくなるのか?」)、前々回(買ってよかった本「もういちど、本屋へようこそ」)に紹介した書籍と同じく、普段の自分の読書傾向やブログ内容とは少し(だいぶ?)違うジャンルではありますが、内容的に考えさせられるところが多かったので、ブログでも取り上げることにしました。

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「ファスト教養」とは?

社交スキルアップのために古典を読み、名著の内容をYouTubeでチェック、財テクや論破術をインフルエンサーから学び「自分の価値」を上げろ─このような「教養論」がビジネスパーソンの間で広まっている。
その状況を一般企業に勤めながらライターとして活動する著者は「ファスト教養」と名付けた。
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち (集英社新書) 新書 – 2022/9/16
レジー (著)

Amazon.com紹介ページ(https://amzn.to/40fedhB)より引用

この本は2019年ごろに「ビジネス書大賞ランキング1位」にも選ばれたことのある話題作です。タイトルにある“ファスト”は、言わずもがなファストフードのように手軽で早いという意味合いで、現代の教養コンテンツ(たとえばビジネス書、自己啓発本、思考法をテーマにした書籍、あるいはYouTubeのまとめ動画やワンシート資料など)を教養のファストフード的だとして論じています。

いわゆる「教養としての近代史」や「教養としての宗教」など、あるジャンルをざっくりとまとめ、エッセンスだけを抽出したコンテンツが世の中にあふれている現状に対して、著者はやや批判的です。

同じように医学分野でも、「まとめシート」や「1ページ要約」など、医学知識をコンパクトに凝縮したコンテンツがSNSや動画プラットフォームにあふれています。

…と、ここまで読むと、「お前のブログもファスト教養じゃないか」と思われるかもしれません(笑)。

たしかに自分も、ある医学トピックについてかいつまんで紹介したり、最近気になった面白い視点を要約したりすることがあります。半分は自分の整理のためで、もう半分は読者の時間を奪わない“効率のいい情報発信”を心がけているつもりですが、それもファスト教養的になってしまっていないか、少し考えさせられました。

医学分野でのファスト教養と学習効果の違い

全く医学に関係ないのもブログのテーマ的にどうかと思いますし、「学習効率においてファスト教養的な学び方ってどうなんだろう?」とPubMedで調べてみたところ、動画ベースの学習と、原典にあたる学習(例:教科書等)との記憶保持の差に関する研究もいくつか見つかりました。

4-5分の動画 vs 教科書ベース

2019年に発表されたフィラデルフィアからの報告です。アセトアミノフェン中毒に関する学習コンテンツについて、4-5分程度の動画と教科書による学習を比較しています。最初に事前テストを行い、その後2つの群に分かれて勉強し、事後テストを行っています。結果的には動画教材の方が点数が書く、満足感もあったようです。Limitation的には、n=69の少数であることや、テスト内容と動画・教科書内容に情報の偏りがありそうなところでしょう。

Vo T, Ledbetter C, Zuckerman M. Video delivery of toxicology educational content versus textbook for asynchronous learning, using acetaminophen overdose as a topic. Clin Toxicol (Phila). 2019;57(10):842-846.
doi:10.1080/15563650.2019.1574974

MCQの成績と手技獲得

こちらは2014年に発表されたデンマークからの報告です。この報告では10-15分程度の動画教材と教科書ベースの指導を比較しております。MCQ50問と、OSCE(おそらくeplry法や甲状腺の診察法についての手技評価と喉頭質問)の成績を、指導直後の一次試験と1か月後の二次試験の2つで評価しています。MCQの成績は大きな有意差は一次二次ともに有意差は出ておりませんが、手順やOSCE技法などについては一次試験・二次試験共に有意差を以て成績が分かれています。MCQのような知識問題(かつ今回はMCQ 50問と多い)時には教科書ベースでも動画ベースでも変わらないですが、手順や手技問題は動画ベースの方がいいのでしょうね。

研修医への指導でも、例えばCV挿入や腰椎穿刺などは、教科書ではなく動画ベースの方がいいなぁと思いました。

Buch SV, Treschow FP, Svendsen JB, Worm BS. Video- or text-based e-learning when teaching clinical procedures? A randomized controlled trial. Adv Med Educ Pract. 2014;5:257-262. Published 2014 Aug 16.
doi:10.2147/AMEP.S62473

ショート動画や1シートの学習効率

残念ですがさすがにこちらに関しては論文は見つけられませんでした。研究にもしずらいのかもしれませんが…。
今後TwitterやTiktokで勉強するような医学生が増えることがあれば(?)、世界の誰かが比較・研究してくれるのかもしれません。

おわりに

今回紹介した書籍(ファスト教養)は普段医学書ばかり読んでいる自分にとって新しい視点をくれた一冊でした。この記事も、ここまで読んでいただけた読者の方々の今後に役立てていただけたら嬉しいです。(このブログ自体もファスト教養的なコンテンツではありますが…)

ファスト教養、内容がすごくオススメなので是非読んでみてください。普段医学ばかりなのでたまに畑の違う本を読むとすごく新鮮でいいですね。

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