先日、カンファレンスでレジオネラ尿中抗原の偽陽性疑いの症例が話題に上がりました。
特異度の高い検査ではありますが、何事にも偽陽性リスクはあるかと思い調べました。
明日からの診療に役立てられれば幸いです。
レジオネラ尿中抗原検査の種類
調べた範疇内では抗原検査キットの種類として、以下のものがありました。
- Abbott製 BinaxNOW™ レジオネラ1)
→血清型1LPS抗原のみ検出 - EIKEN製 イムノキャッチ®レジオネラ2)
→血清型1LPS抗原のみ検出 - Abbott製 リボテスト®レジオネラ3)
→血清型1LPS抗原+L7/L12抗原も検出 - 極東製 リボテスト®レジオネラ4) ←旭化成ファーマから移行5)
→血清型1LPS抗原+L7/L12抗原も検出
触れたとおり、BinaxNOWとイムノキャッチは血清型1LPSのみで、Abbott,極東ともにリボテストはL7/L12抗原”も”検出可能です。
Qライン極東レジオネラや、チェックレジオネラ(アルフレッサ製)もあった5)ようですが、検索しても製造ページがヒットしません。販売終了なのでしょうか…?
レジオネラの菌種と血清型、L7/L12抗原
国立感染症研究所の2013年の報告7)によれば下記のようになっています。すなわち、L. pnuemophilaがほとんどを占め、血清型1が全体の84%近くではありますが、残り16%は血清型1以外が占めています。
菌種の内訳は191株がLegionella pneumophila[血清群(SG)1が165株、SG2が4株、SG3が8株、SG5が2株、SG6が5株、SG9、SG10が各2株、SG12、SG15、群別不能が各1株)で、それ以外の菌種はLegionella feeleii、Legionella londiniensis、Legionella longbeachae、Legionella rubrilucens各1株だった。

このうち、血清型1のLPS抗原に対する検査薬が、BinaxNOW・イムノチェックです。異なる血清型でもLPS抗原に対する交差反応は知られており、血清型7と血清型9で反応が認められるようですが、検体濃度に依存します。したがって血清型1では低濃度でも反応していますが、血清型7と9では陰性になっています。

上記LPS抗原以外に、L. pneumophilaのリボソームたんぱく質の一部分(L7/L12)を検出できるようにしたのが、リボテスト(Abbott, 極東ともに)です。やはり、リボソームをターゲットにしているだけあって、レジオネラの菌種を超えて交差反応が認められています。添付文書4)によるとL. dumoffiiとL. bozemanaeに交差反応があると添付文書上も記載されていました。LPS抗原のときとは違って、こちらは抗原濃度が同じ状況下でも反応していますので、リボテストはL. pneumophila全てとL. dumoffiiとL. bozemanaeを検出可能、と考えていいのかもしれません。

L. pneumophila以外の菌種について知る必要はないように思いますが、しいて上げるならL. longbeachaeです。オーストラリアやニュージーランドではL. pneumophila以上に分離頻度の多いレジオネラですので、渡航者では注意が必要になります。腐葉土などの土壌やガーデニング、その散水がリスク因子です10)。
レジオネラ尿中抗原の偽陽性の報告
前置きが長くなりましたが、本題です。
疑陽性については複数の報告があり、羅列させていただきました。
- 患者由来成分あるいは食事性のもので偽陽性を起こす何らかの高分子タンパク質が便に排出され、それが尿に混ざった場合には偽陽性を生じうると考える11)
- 特に緑膿菌だけでなく、腸内細菌科のグラム陰性桿菌も、尿中抗原検査で偽陽性の結果を出す可能性がある12)
- 拒絶反応を防ぐためにコルチコステロイドやウサギ抗体を使用した治療後。患者の尿中に含まれていたウサギ抗体が検査に干渉した可能性。13)
- Nocardia asteroidesによる肺・脳病変のある患者での偽陽性報告14)
pubmedでヒットした限りでは上記のみですが、実臨床ではもっと多いような声も聞きます。
検査前確率が極めて低い中での尿中検査の陽性報告の場合には、上記のような偽陽性のリスクを考えたほうがいいかもしれません。
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以下引用:
1)Abbott BinaxNOW™ レジオネラ
https://www.globalpointofcare.abbott/jp/ja/product-details/binaxnow-legionella-ous.html
2) EIKEN イムノキャッチ®レジオネラ
https://www.eiken.co.jp/POCT/products/imuno_legionella/index.html
3)Abbott リボテスト®レジオネラ
https://www.globalpointofcare.abbott/jp/ja/product-details/ribotest-legionella.html
4)極東製薬工業株式会社 リボテスト® レジオネラ
https://www.kyokutoseiyaku.co.jp/products/ribotest-legionella
https://www.kyokutoseiyaku.co.jp/products/related_docs/package_insert/45100-1.pdf
5) 極東製薬工業株式会社 リボテスト® シリーズ製造販売承認承継のご案内
https://www.kyokutoseiyaku.co.jp/files/Newsrelease-211001.pdf
6)山口 育男 イムノクロマト法による尿中レジオネラ抗原検出試薬における有用性の検討―新たに開発された試薬と既存の3試薬の性能比較― 医学検査 Vol.64 No.2 2015
7)NIID 国立感染症研究所 レジオネラ臨床分離株の型別-レファレンスセンター活動報告として(IASR Vol. 34 p. 161-162: 2013年6月号)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2252-related-articles/related-articles-400/3599-dj4004.html
8)Abbott BinaxNOW 添付文書
https://www.eiken.co.jp/POCT/products/binax_leg/pdf/binax_leg_tenpu_1.pdf
9)旭化成ファーマ リボテスト製品情報ページ
https://www.asahi-kasei.co.jp/shindan/ribotest/ribotest-legionella/ribo_legionella_index.html
10)J Infect Dis. 2002 Jul 1;186(1):127-8. doi: 10.1086/341087. Epub 2002 May 21.
11)溝口 義浩 尿中レジオネラ抗原検査にて偽陽性を呈した 1 症例とその原因物質の検証
12)Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2019 Jul;38(7):1377-1382. doi: 10.1007/s10096-019-03575-2. Epub 2019 May 22.
13)Clin Infect Dis. 1999 Oct;29(4):953-4.
14)J Med Microbiol. 2004 Feb;53(Pt 2):173.



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