非定形肺炎の鑑別

感染症
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先日、また市中肺炎の患者さんが入院してきました。コロナ流行期にめっきり減った市中肺炎が、この半年(2023年下半期~2024年上半期)で増えてきている印象です。いままでマスクしていたからの反動なのでしょう。

よく「肺炎=CTRX、ちょっと重症そうならP/T、否定型っぽければ+AZM」なんて言葉を口にしている先生を目にします。確かに一般的な市中肺炎、特に「肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などによる定型肺炎」は大体CTRXで治療できるし、「マイコプラズマやレジオネラなどの非定型肺炎」も、AZMが1st choiceにはならないケースがあるにせよ効きますので間違ってはいないのですが、治療だけするだけして、病原体診断がなされていないケースを多く感じましたので改めてまとめました。

「治療はできたけどいったい何だったの・・・?」なんて症例があったときの参考にしてみてください。

この記事を書いた人
Dr.Tk

はじめまして。本ブログの管理人で、感染症専門医・総合診療医として診療に従事しています。
臨床における疑問点について、できる限り多くのエビデンスを交えながら発信することを心がけています。
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非定型肺炎の原因菌

すべての診断は事前確率と事後確率から計算されます。その中でも一番事前確率に影響するのは、(問診や身体所見もそうですが)、やはり疫学が事前確率の重要因子だと思います。定型肺炎、非定型肺炎、ウィルス性肺炎が入り混じりますが、米国では「外来ではマイコプラズマはよくいて、入院では非定型は少なく、挙げるならマイコプラズマとレジオネラが多い」とされています。

具体的な頻度としては、2005年のカナダの病院で発表された外来患者での疫学調査1)では、M. pneumoniaeが15%, C. pneumoniaeが12%と報告を受けています。(あれ?クラミジアが多くないか?→後述します)。

入院患者での頻度は2016年に米国で発表された疫学調査2)では、病原体を同定できた症例853例の内、M. penumoniaeは43例、L. pneumoniaeは32例、C. pnuemoniaeが9例だったようです。実際には病原体診断できない症例もありますのでそれを合わせると、「入院患者では4%程度でM.pneumoniaeL.pneumoniaeC. pneumoniaeが占める」と述べています。(あれ?こっちではクラミジアが極僅かなのに指摘されている)

上述のごとく考えると少なくとも入院を要するような症例では、たいていはM. pneumoniae、時点でL.pneumoniae、次いでC. pneumoniaeを想定しておけばいい。という形になりそうです。

それぞれの病原体診断は?

先に少し脱線しますが、C. pneumoniaeの肺炎の診断に関しては注意が必要です。上記のような疫学調査は主に血清学的な検査で診断を付けていたようですが、その血清診断に難があるようです。クラミジア肺炎に限ったことではないかもしれませんが、血清診断では過去の感染を否定できません。基本的にペア血清で評価となりますが、肺炎クラミジアの抗体はそもそも成人ではすでに上昇していることが多い上に、感染後の抗体価の上昇スピードも遅く、ペア血清を評価しているうちに治療は完遂してしまいます。そういったこともあり上記米国の疫学調査2)でも頻度は1%未満と少ないのではないか、となっている感じです。COVID-19なども網羅的に評価できるfilmarray🄬3)であれば早期に引っ掛けられると思いますが、肺炎症例に対して鼻咽頭検査をした時に感度がどれほどあるのか、筆者はまだ知りません。

M. pneumoniaeに関しては上記①ペア血清で評価②filmaarray🄬に加えて、③喀痰LAMP法④培養検査はありますが、やはり①は時間がかかるうえ②は保険の問題、③は外注、④は特殊な培養が必要で困難なことがある・・・といった問題がありそうです。更にマイコプラズマはPCR陽性だとしても無症状病原体保菌者もいるため、陽性だとしても保菌の可能性はあります(通常は起因菌とは考えますが)。そんなこんなでルーチンの検査はUpToDateでは推奨されていないようです。

最後のL. pneumoniaeでは尿中抗原検査で注意が必要です。下記のグラフのようにレジオネラには複数の血清型や、L. pneumoniae以外の菌種(L. longbeachaeなど)がいますが、イムノキャッチ🄬4)などの尿中迅速検査キットは血清型1しかtargetにしておらず、血清型2-15は検出できません。

それに対してリボテスト®5)は血清型1-15まで検査可能ですので今後普及していけばと思っています。

国立感染症研究所HP6)から引用・編集

とはいえレジオネラは尿中迅速抗原がありますゆえ、検査はしやすいのかもしれません。それに加えて上記同様にLAMP法も検査可能です。ただし、一方でfilmarray🄬には含まれていないことには注意が必要です。

追記:
レジオネラ尿中抗原の偽陽性について別に記事を書きました!
https://giminfection.com/2024/09/03/尿中抗原の擬陽性

上記以外の稀な非定型肺炎の起因菌は?

上述のごとく頻度の高い非定型肺炎の起因菌はM. pneumoniaeL.pneumoniaeC. pneumoniaeですが、国家試験的にもおなじみC .psittaciはどうすればいいでしょうか。また、Q熱の病原体であるCoxiella burnetiiや、Francisella tularensisによる野兎病なども含まれてきます。

上記のような稀な非定型肺炎の検査はハードルが極めて高い(C. psittaciは抗体が図れるけど・・・)ですので、詳細な病歴聴取が必要不可欠になってくると思われます。

具体的には上記すべて動物媒介ないしマダニ媒介ですので、ペット飼育歴やペットショップ、鳥の飼育歴・接触歴、キャンプ、海外渡航等を網羅的に聞いていき疑わしい場合に検査を行うという流れになると思われます。(これらをすべて状態が悪くなってから聴取することは困難なので、非定型肺炎の診断に至った時点で網羅的に聞いた方がいいかもしれません。)

Take Home Message

まとめると、

  • たいていはマイコプラズマ。次いでレジオネラ。国家試験でよく出るクラミジア肺炎は実際には少ないかもしれない。
  • 血清診断には時間がかかる。良質な検体を取ってPCR検査を出すことを念頭に置く。
  • 動物媒介/マダニ媒介のような稀な病原体の検査は、初診の時にしておく

こんな感じでしょうか。

明日からの診療に役立てればよいのですが。。。何か追加点や修正点などあればコメントまでお願いします。

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引用:

1)Marrie TJ, Poulin-Costello M, Beecroft MD, Herman-Gnjidic Z. Etiology of community-acquired pneumonia treated in an ambulatory setting. Respir Med. 2005;99(1):60-65.

2)Jain S, Self WH, Wunderink RG, et al. Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization among U.S. Adults. N Engl J Med. 2015;373(5):415-427.

3)FilmArray呼吸器パネル2.1 ビオメリュー・ジャパン株式会社

4)Eiken PCT SITE https://www.eiken.co.jp/POCT/products/imuno_legionella/index.html

5)極東製薬工業株式会社 リボテスト® レジオネラ

6)国立感染症研究所 レジオネラ臨床分離株の型別-レファレンスセンター活動報告として

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2252-related-articles/related-articles-400/3599-dj4004.html

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